神様の願いごと
◆いつも、光る


安乃さんが亡くなったのは、7月の終わりのことだった。





それはちょうど、大和から甲子園出場決定の知らせが来た日だ。

わたしが安乃さんに会いに行ってから、本当に間もなく。地方大会の決勝の結果を大和からの電話で知って、お父さんとお母さん、それから紗弥にも伝えて、みんなで喜んでいた日。


わたしが知ったのは、亡くなってから数日経ったときだった。

昨日一昨日と、いつまで経っても常葉が姿を現さなかったのにムカつきながらも、日課になっていたせいでマジメに神社に向かっていた途中。

たまたま、安乃さんのお家の前を通って、ちょうど、安乃さんの娘さんに会って。昨日が、安乃さんのお葬式だったんだと聞いた。


「ねえ千世さん、9月頃になったら、また家に遊びに来てくれないかしら」


少し疲れた顔のマダムは、それでも笑顔を浮かべたままでそう言った。


「うちに咲いてるひまわりの種を、千世さんにも分けてあげたいって母が言っていたのよ。だから千世さんが嫌じゃなければ、種が取れる頃にまた来てちょうだい」


わたしが頷くと、マダムは嬉しそうな顔をした。

それからわたしは、いつもよりもゆっくりとした足取りで、常葉のいる、神社へ向かった。

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