神様の願いごと
三波屋は、商店街の学校に近いほうにある。前は学校帰りに週に2回くらい寄っていたけど、最近はアイスばっかりだから来るのはちょっと久しぶり。
開けっ放し入口に入ると、カウンターの向こうからいつものおばちゃんが顔を出した。
「あら千世ちゃん、いらっしゃい。久しぶりねえ」
「こんにちは。ちょっと来てなくてすみません」
「いいのよ。暑くなったし、おまんじゅうよりアイスとかかき氷のほうが食べたくなるもんね」
「えへへ……」
おばちゃんするどいな。
笑ってごまかしながらカウンターを眺めてみる。買うモノは決まってるんだけど、ずらっと綺麗な和菓子が並んでいるとどうしてもひとつひとつ見てしまう。
「なんか、商品増えましたね」
「そうなのよ。最近いろいろ開発しててね。ほら、駅前口と反対の方に、おいしいたい焼き屋さんができたの知ってる?」
たぶん、例の元まずいたこ焼き屋さんのことだ。
「あそこの奥さんの相談でいろんな餡を試してたら、ウチでも新しいの作ってみようってことになって」
「へえ、そうだったんですか」
なるほど。
あのたい焼き屋さんは三波屋とタッグを組んでいたのか。道理であんなにおいしいわけだ。
「千世ちゃんは、今日もいつものだよね」
「はい。でも新商品も、また今度買いにきます。すごいおいしそう」
「あら、ありがと。千世ちゃんならおまけしてあげるからね」
小銭で、2個分ぴったりのお金を払うと、おばちゃんがレシートと一緒におまけでアメをくれた。ちっちゃい子が来るとあげているらしい。おばちゃんからしてみればわたしも3才児もおんなじみたいだ。