神様の願いごと
◆枝分かれの迷い途中
今日はとうとう朝から雨が降った。
湿気たっぷりのじめっとした梅雨の空気。
空は昨日よりも真っ暗で、お日様がてっぺんにいるはずの今の時間も、まるで夜の目の前みたいに薄暗く気味悪い雰囲気を漂わせている。
6月の雨は、夏を乗り切るための恵みの雨らしい。だけど、それにしてもここまで陰気くさいと、どうにもテンションが上がらない。
ただし、今日のわたしのテンションについては、梅雨空とは無関係だ。
わたしの心がじめっとした空とおんなじようにじめっとしているわけは、別のところにある。
「千世、なーんか今日元気なくない?」
机に突っ伏していたら、どかっと勢いよくイスに座る音がした。
声でわかるけど匂いでもわかる。常にチョコとか砂糖みたいな、甘い匂いをまとっているのだ。
わたしはまるでそれにつられるアリンコのように顔を上げた。上げた先では思ったとおり、前の席に座った紗弥が、面白そうにわたしのことを覗いていた。
「紗弥あ……元気、もりもりです……」
「いや、引くくらい元気ないよ。どうしたの、嫌なことでもあった?」
「んー……まあ、そんな感じ」
「あらら。まあまあ、これ食べて元気だしなよ」
机の上に置かれた紗弥お手製のクッキー。
それは、わたしの命の源なのである。