君と過ごした嘘つき時間
おばあさんは、本当に助かったみたいな
柔らかい表情で微笑んだ。

「嬉しいわ。今時の若い子でも
こんなに優しい子がいるなんて…」

「い、いえ。優しいもなにも
私は当然のマナーを守ったまでです」

本当は席なんか譲りたくなかった。

だって、彼の後ろに座れるなんて
本当滅多にないことだから。

でも…。お年寄りの方に席を譲るのは礼儀。

それに、このおばあさんがいたから
寝坊した私は、このバスに乗れたんだ。

おばあさんがいなかったら、きっと
今頃私はショックで落ち込んでたと思う。

彼の後ろの席はレアだけど、
今日も、彼と同じバスに乗れたことだけでも
彼を見ることができるだけでも

今の私は十分に幸せ♪
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