i f~小さな街の物語~
第6話「同じ13歳」
ー その日の放課後 ー
(は~、今日も疲れた。帰ろ。)
長く感じた1日もようやく終わり
俺はすぐに帰宅しようとしていた。
卓也たちは
部活の見学に行くと言っていたから
今日は1人で帰ることになる。
(俺も部活見学した方がいいかな~。
、、、、、まあ、、今日はやめとこ。)
憂鬱な気分になりながら
歩き出したその時。
「おーい。」
後ろから声がする。
それが自分のことを
呼ぶ声だったのかはわからなかったけど
自然とその声に反応してしまった。
「あ、、、、」
振り向いた先には
山口裕太の姿があった。
驚く俺とは対照的に
彼は表情一つ変えない。
「あ~、、、一緒に帰んね?」
意外すぎる言葉だった。
「ふーん、あそこの団地に住んでるんだ。」
数分後、俺は彼と一緒に歩いていた。
「おう。山口はどこに住んでるの?」
「俺は、もっと奥だよ。アパート暮らし。
てゆーか、裕太でいいよ。俺も翔って呼ぶから。」
「わかった!」
話して初めてわかったことだけど
裕太は思っていたよりも、ずっと喋る奴で
全然悪い奴じゃなさそうだった。
隣で歩く彼は
学校とは別人のようで
優しい笑顔で楽しそうに話していた。
俺は、彼のその表情を見て確信した。
彼も、同じだと。
いろいろなことを
「面倒くさい」で処理して
カッコつけて、強がって。
でも本当は1人ぼっちが寂しくて。
結局は、俺も裕太も
そしてバカにしていたクラスのみんなも
同じ13歳だってこと。
だから、素直な人間になりたい。
裕太と話しながら
俺はそんなことを感じていたんだ。
そんな人間になるために
少しずつ行動に移していけばいい。
その第一歩を俺は踏み出した。
「なあ、裕太。」
「ん~?」
「今日、家で遊んでかない?」
おれの言葉を聞いた裕太は
凄く驚いていた。
そして
目を大きく見開いたまま答えた。
「、、、マジ?いいの?」
「うん!つーか来い!」
こうして
俺にとって
自分の力で作った
初めての中学校の友人が
家にやってくる。
第6話
「同じ13歳」~完~
第7話
「家庭事情」へ続く