無垢なヴァンパイア
男は時間が止まったかのように水晶の中の少女を見つめている。
「どうした?我らの主の美しさに驚いたか?」
双子のうちの片方がからかうように言った。
「だが、我らの主の美しさは目覚めてこそ本当にわかる」
もう一人の双子は自慢げに言った。
「…所詮噂かと思ったのにな」
男の声は小さすぎて双子には届かなかった。
男は歩いていき、少女の目の前に立った。
「お前が眠ってから、約300年経った。そして、今ヴァンパイア界、人間界の両方にかつてない異変が起きている。その異変とはヴァンパイアの異常発生だ。そのせいでヴァンパイア達が表の世界に出てきつつある」