無垢なヴァンパイア
「どうして?また仕留めればいい話じゃない!」
「今まで外でお前が襲われたことはあっても、ここにまで侵入してくる奴はいなかった。賢いお前ならどういうことかわかるな?」
わかってるわ…ここにまで来たということはそれだけの自信があるということ…
だからといって私一人だけ逃げたくない!
「…私もここに残って命尽きるときまで戦います。」
無言で父は首を振った。
「お前はなんとしてでも生き残らなければいけない。…お前は救世主なのだから。…そして私たちの希望なのだから」
ドンッ!!
「くくく…こんなとこにいたのか…」
狂気を浮かべた男が入ってくる…
一人、二人、三人…
父が襲撃者たちと戦闘を始めた。
腰に留めてある短刀に手をやった。
「逃げなさい…」
母がいつの間にか目の前にいて私の手を掴んでいた。
嫌よ!!
「貴方は私達の希望。こんなとこで死んではいけないの。愛しい愛しい娘…逃げてちょうだい」
ドンッ!
体が開いている窓を通っていく。
母が私を窓から逃がしたのだ。
「リマ!マリ!リルアを連れて行きなさい!!」
「「かしこまりました」」
瓜二つの綺麗な顔をした女が二人どこからか現れて返事をした。
「嫌よ!離しなさい!」
「「従えません」」
「お前達の主は一体だ、れ…」
ザシュッ
「はーはっはっは!!!大したことねぇなぁ!!」
母上?父上?
誰が斬られたの?
私はリマとマリに引きずられているせいですでにあの部屋が見えない所にいる。
「いやああああああ!!!」
「姫様!お静かに」
バタバタバタ!!
襲撃者たちが来た。
完全に頭に血が昇っていた。
「いいわよ…相手してあげるわ…」
私は感情のまま相手を殺そうとした。
「姫様…お二人が命を懸けて姫様を逃がそうとしていることを台無しになさるのか?」
リマの言葉で我に帰った。
そうだ…父上と母上が私に望んだことは戦って死ぬことじゃない…
「リマ、マリ…逃げるわよ」
「「かしこまりました」」
私は隠し通路を使って屋敷から逃げ出した。