王子様の危険な恋愛領域
「紗姫、香山先生には用心した方がいいわよ?」
「えっ?」
「香山先生って、王子のこと…気に入っているみたいだから。」
「そ、そうなんだ…。」
耳元で小声で話す亜弓ちゃんに、呟くように言葉を返す。
生徒のみならず、先生にまでファンがいるのか…。
改めて光琉の人気の高さに、苦笑いしてしまった。
「とにかく、気をつけてね。」
「う、うん…。」
何を気をつけたらいいのか、イマイチ分からないながらも、コクンと頷いた。
「それじゃあ、私…先に行くね。」
「うん、またね。」
音楽室を出て行く亜弓ちゃんを見送った後、私は香山先生と一緒に準備室へと入る。
静かな準備室。
心なしか空気が重い。
「あ、あの…私に何か用事でしょうか?」
おそるおそる訊ねると、香山先生はギロリと私を睨んだ。