王子様の危険な恋愛領域

「お、重い…。」


クラスの人数分の課題ノートと冊子を両手で抱えながら、ゆっくり歩く。


これって、絶対に嫌がらせよね…。


本当は、光琉の彼女じゃないのに…事実を言えないのが、もどかしい…。


ハア…と盛大に溜め息を漏らした。


彼女のフリ、早く終わりにしてくれないかな…光琉。
 
 
そんな切なる願いを抱きながら、教室へと足を進めていく。
 

階段の前までやってきた私は、ピタリと足を止めた。


ここを降りないと、教室に行けないんだよね…。


だんだんノートや冊子を持つ手も震えてきたし、慎重に降りなくちゃ。


深呼吸をしてから、一段ずつ階段を降りていく。


この調子なら順調に降りることが出来そう…。


少し油断した、その時だった。



「ひゃっ…!?」


足元がよく見えないのが災いし、足を踏み外してしまった私。


ガクンと大きく視界が揺れて、体が前のめりになる。


このままじゃ、落ちる…。


反射的にギュッと目を瞑った。


< 109 / 295 >

この作品をシェア

pagetop