王子様の危険な恋愛領域
いわゆる、お姫様抱っこ状態。
周りで見ていた女の子たちからは、一斉に悲鳴が上がる。
ショックを受けた顔をしてる子、ポカンと口を開けて固まっている子、鋭く私を睨む子など、反応は様々だ。
「ったく、うるせぇ女たちだな。」
光琉は眉をしかめる。
女の子たちを不機嫌そうに睨みつけながら、チッと舌打ちをした。
「ちょっと、光琉!私なら大丈夫だから、おろして!こんなの、恥ずかしいよ…。」
バタバタと足を動かすと、光琉の視線は私へと向けられる。
その顔は、今の今まで不機嫌だったのが信じられないぐらい、優しさ溢れる表情だった。
「痛くて立てなかったんだから、大丈夫なわけねぇだろ?このまま保健室に運ぶから、恥ずかしいのは我慢しろ。」
「で、でも…ノートや冊子を教室まで運ばなくちゃ…」
「そんなもん、代わりに運んでもらえばいい。紗姫が無理する必要ねぇよ。」
そう言うと、光琉はグルリと周囲を見回した。