王子様の危険な恋愛領域
「誰か、この辺に散らばってるノートと冊子…紗姫のクラスに運んでくれない?」
素っ気なく声を発した光琉。
そんな風に呼び掛けたって、私のクラスまで運んでくれる人なんか、いるわけないよ…。
そう思ったんだけど…。
「私…運びますっ!」
「あっ、私も運びます!!」
「私も!王子の頼み事なら喜んでやります!」
女の子たちが次から次へと駆け寄って来て、散らばっているノートや冊子を拾いはじめる。
その光景に、目を見開いてしまった。
光琉の影響力って、凄まじいな…。
冷たく言い放った言葉でも、たくさんの女の子たちを動かすんだから。
「さてと、俺たちは保健室に行くぞ。」
「えっ、ひゃっ!」
私を抱きかかえたまま歩き始めた光琉。
足早に保健室へと向かう。
途中、廊下ですれ違う女の子たちからは悲鳴や歓声が飛び交うけれど、光琉は全て無視。
なぜか、私の方ばかり見ていた。
もう……。
どうして、そんなに堂々と歩けるのよ…。
恥ずかしくてたまらない私は、火照ってるんじゃないかと思うほど顔が熱くなっていた。