王子様の危険な恋愛領域
桜の木がすぐ傍にあって、木陰になっているベンチ。
爽やかに吹き抜ける風が心地いい。
光琉の試合そっちのけで、うたた寝しちゃおうかな…。
そんなことを考えていると、今にも試合が始まりそうだというのに、光琉が私の方に駆け寄ってくる姿が目に映った。
えっ、な…なんでこっちに来るのよ…!
まさか、私の考えてたことが読まれた…?
いやいや、いくらなんでも…そんなことないわよね…。
ソワソワしながら座っている私の傍に、あっという間にやってきた光琉は、満足げに笑みを浮かべた。
「ちゃんと、来たんだな。」
「だ、だって…光琉が“来い”って言うから…。」
ポツリと呟く。
そんな私の頭を光琉はフワフワと優しく撫でた。
「退屈させねぇような試合にするから、しっかり俺だけ見てろ。目を逸らさずにな。」
真っ直ぐ私を見つめる瞳に、なぜか…胸がドキッと跳ねる。
何も言葉を返せないまま固まっていると、光琉は口元を緩めて笑った。