王子様の危険な恋愛領域

桜の木がすぐ傍にあって、木陰になっているベンチ。


爽やかに吹き抜ける風が心地いい。


光琉の試合そっちのけで、うたた寝しちゃおうかな…。


そんなことを考えていると、今にも試合が始まりそうだというのに、光琉が私の方に駆け寄ってくる姿が目に映った。


えっ、な…なんでこっちに来るのよ…!


まさか、私の考えてたことが読まれた…?


いやいや、いくらなんでも…そんなことないわよね…。


ソワソワしながら座っている私の傍に、あっという間にやってきた光琉は、満足げに笑みを浮かべた。


「ちゃんと、来たんだな。」


「だ、だって…光琉が“来い”って言うから…。」


ポツリと呟く。


そんな私の頭を光琉はフワフワと優しく撫でた。


「退屈させねぇような試合にするから、しっかり俺だけ見てろ。目を逸らさずにな。」


真っ直ぐ私を見つめる瞳に、なぜか…胸がドキッと跳ねる。


何も言葉を返せないまま固まっていると、光琉は口元を緩めて笑った。





< 128 / 295 >

この作品をシェア

pagetop