王子様の危険な恋愛領域
「じゃあ…もうすぐ始まるし、行って来る。」
そう言って、グラウンドの真ん中辺りまで走っていく光琉の姿をボンヤリと見つめた。
光琉、嬉しそうな表情だったな…。
そんなに嬉しいことなんだろうか…。
っていうか、私は…またドキッていう変な胸の違和感を感じちゃったし…。
訳分からない…。
うーんと唸りながら首を傾げていると、不意に察知した鋭い視線。
おそるおそる、そちらに目を向ける。
視界に映ったのは、グラウンドの入り口付近にいた、たくさんの光琉ファンの女の子たち。
みんなで私をギロリと睨んでいた。
こ、怖い…。
一人だけならまだしも、たくさんの女の子たちから一斉に冷たい視線を浴びるのは、迫力が半端ない。
思わず肩をすくめた。
なんで、私がこんな肩身の狭い思いをしなきゃいけないのよ…。
大体、今のは…光琉が勝手に駆け寄って来て声を掛けてきただけなんだから…。
睨まれる筋合いないんですけど…。
心の中で不満を零していると、試合開始のホイッスルがグラウンドに響いた。