王子様の危険な恋愛領域
渡り廊下の真ん中に立って、話をしている様子の二人。
なにやら、重苦しい雰囲気が漂っている。
喧嘩でもしてるんだろうか…?
どうでもいいけど、そこで話をしないでよ…。
私は、その先の北棟に用事があるんだから…。
イライラしながら見ていると、黒岩先輩がまた口を開いた。
「ねぇ、答えてよ!“今後、俺に近寄るな”って、どういうこと?私たち、別れる…ってことなの?」
う、うそ…。
別れ話!?
絵になり過ぎるぐらい、お似合いのカップルって言われてる、あの二人が…?
瞬きしながら驚いていると、黒岩先輩は皆辻君の腕をギュッと掴む。
「王子、答えてよ…!ねぇってば…!」
そう訴えた時、皆辻君から大きな溜め息が零れた。
「……うるせぇな。」
ダルそうな声が響く。
皆辻君は、黒岩先輩の手を荒々しく振りほどいた。
「そもそも…別れるとかいう以前に、俺らは付き合ってるわけじゃねぇだろ?“恋人のフリ”、そういう契約だったよな?」