王子様の危険な恋愛領域
「ムカつく。」
「は、はい?」
「あの男、すげぇムカつく。」
「な、なんで?光琉、淳也とは…殆ど話したことないでしょ…?」
そこまで苛立っている理由が分からない。
疑問符を浮かべていると、光琉は私を抱きしめていた腕を解く。
やっと解放された…と安堵する間もなく、次の瞬間…私の体は光琉の方へと強引に向けさせられてしまった。
「紗姫。」
「な、何よ…。」
少し怒っているかのような光琉の表情。
眉間には、ググッとシワが寄っていた。
「アイツのこと、親しげに名前で呼ぶのは止めろ。」
「は?」
「お前が他の男の名前を口にするとか、すげぇ不愉快だから。」
どうして、光琉が不愉快になるのよ…。
訳の分からない言葉に、不満が募る。
「淳也は幼なじみなんだから、別に親しげに名前を呼んだっていいじゃない…。」
ポツリと呟いた途端、光琉は私の顎を指ですくうと、鼻先が触れそうなほどの距離まで顔を近付けてきた。