王子様の危険な恋愛領域
えっ…!?


今、“可愛い”って言った…?


予期せぬ言葉にパッと顔を上げると、光琉は柔らかな笑みを浮かべていて…。


その表情を見た途端、ドクンッ…と鼓動が波打った。


ど、どうして光琉の笑顔に反応しちゃってるのよ…。


またしても感じた不可解な症状に戸惑っていると、光琉がチラッと私の後方に視線を向ける。


その直後、浮かべていた笑みは照れくさそうな表情に変わった。



「紗姫、行くぞ。」


「えっ…!?」
 

私の手を握った光琉。


急にどうしたんだろう…と思いながら振り向くと、梨帆とお母さんが嬉しそうにニンマリしながら私たちを見ている姿が映った。


も、もう…。
梨帆もお母さんもジロジロ見過ぎ…。


私まで恥ずかしくなってしまい、慌ててミュールを履く。


「あ、あの…行って来ます。」


お母さんたちに小さな声で言った後、光琉に手を握られながら、そそくさと家の外に出た。

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