王子様の危険な恋愛領域

「冷たっ……」


反射的に上を見上げる。


すると、灰色の空からポツリポツリと雨粒が落ちてくる光景が目に映った。


朝から曇ってたけど、予報では雨が降らないって言ってたのにな…。


「雨か……。」


光琉も空を見上げて呟いた後、私に視線を向けた。


「もっと降り方がヒドくなるかもしれねぇし、帰るか。」


「そ、そうだね…。私…傘を持ってないし。光琉も…傘ないもんね。」


「ああ。」


「じゃあね…。今日は…スイーツの美味しいカフェに連れて来てくれて、あ…ありがと。」


お礼を言って帰ろうとするけれど…光琉は握っている私の手を離そうとしない。


「えっと、光琉…?」


離してもらわないと、帰れないんですけど…。


心の中で訴えながら見つめると、光琉は私の手を引いて足早に歩き始める。


「ちょ、ちょっと…どうしたの?今、帰る…って言ったでしょ?」


「ああ、確かに言った。」


「私、手を握られたままじゃ帰れないよ…!離して欲しいんだけど…。」


そう言った途端、光琉はピタリと足を止めた。
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