王子様の危険な恋愛領域
「……紗姫!」
「えっ!?」
光琉に名前を呼ばれて周りを見回すと、いつの間にか保健室の隣の部屋にいた。
「何度か名前呼んだのに、完全に上の空だったな。」
「あっ、ごめん…。」
淳也のことばかり考えていて、全然…気付かなかった…。
少し俯くと、突然…グイッと腕を強く引かれる。
そして、そのまま傍にあるベッドの上に押し倒されてしまった。
「ひ、光琉…?」
「アイツのこと、考えてたんだろ?」
私の耳元に両手をついて、真っ直ぐ視線を注ぐ光琉。
「…………。」
その通りのことを言われて、何も言えずにいると、光琉は小さな溜め息を零した。
「やっぱりな。そうだろうと思った。」
「えっ……」
「あの男のことが、そんなに気になるのか?」
おでこが触れてしまいそうなほど、光琉は顔を近付ける。
低い声が部屋に響いた。