王子様の危険な恋愛領域
誰もいない屋上は、とても静か。


少し傾き始めた日差しが辺りを柔らかく照らしている。


屋上の真ん中ほどで足を止めた淳也は、掴んでいた私の腕をゆっくり離した。


「ねぇ、急にどうしたの…?淳也?」


少し息が上がってしまい、肩で呼吸をする。


しばしの沈黙の後、淳也は口を開いた。



「無愛想王子を、マジで一週間も泊めるつもりなのか?」


「う、うん…。」


淳也の低い声に、戸惑いながらも頷く。


「お前、アイツと同居するのがどういうことなのか、分かってんのかよ。」


「分かってるよ…。私一人だと、防犯上…危ないから…それで……」


「そうじゃねぇだろ?防犯がどうこう言うなら、俺の家に泊まればいい話じゃねぇか。なんでアイツが泊まることになるんだよ。」


「そ、それは…お母さんが勝手に決めちゃって……」


「……本当に?」


怒りを含んだような鋭い声にビクッと体が震える。


淳也の眼差しは、私を真っ直ぐ見つめていた。


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