王子様の危険な恋愛領域
「…………。」
「…………。」
お互い無言のまま歩く。
並んで歩いてはいるけれど、いつものように手は繋いでいない。
なんとなく、光琉…私と距離を置いている気がする…。
朝から、私と殆ど視線も合わせてくれないし…。
これも、元を辿れば私が原因だよね…。
一瞬…顔を俯けた私だけれど、すぐに顔を上げて前を真っ直ぐ見た。
いつまでも、ウジウジ後悔してちゃダメだ。
大事なのは、これからだよ…。
今日、伝える…って決めてるんだから。
「あ、あのっ…光琉!」
学校に着き、教室の前までやって来た私は、思いきって口を開いた。
「何?」
「今日の放課後、あの部屋に来て欲しいんだけど…。」
「あの部屋…?」
「う、うん…。例の保健室の隣の……」
「ああ、避難部屋な。分かった。」
「そ、それから…お昼休みなんだけど…」
「あ…、俺…今日は友達と食べていい?たまには付き合えって前々から言われてたからさ。」
「うん…。私も、ちょうど用事あるから…。」
「そっか。じゃあ、放課後な。」
光琉は軽く手を上げると、自分のクラスへと行ってしまった。