王子様の危険な恋愛領域
「いや、違う…。」
「えっ?」
「確かに、紗姫は恋愛に関して鈍いけど…それが理由じゃない。」
淳也は私を見ると、自嘲気味に笑みを浮かべた。
「俺、怖かったんだ…。」
「怖い…?」
「ああ。紗姫に告白することで、それまでの関係がギクシャクするんじゃないか…って。場合によっては、気まずくて話すことすら出来なくなるかも…って思った。」
「…………。」
「小さい頃から、遊ぶにも勉強するにも一緒だったろ?だから…そんな穏やかで楽しい毎日が無くなるかもしれないと思ったら、想いを伝える勇気が出なかったんだ…。“このまま、紗姫の傍に居られればいい”って…。そういう気持ちの方が強かった…。」
そっか…。
淳也、ずっと…そんな風に考えてたんだ…。
「でも、自分の気持ちを伝えることから逃げてた俺は、結局…無愛想王子に紗姫の心…持ってかれた…。これも、自業自得なんだよ…。」
淳也は抱きしめていた腕の力を緩めて、ゆっくりと体を離した。