王子様の危険な恋愛領域
驚きのあまり、ビクッと肩が跳ねる。
すぐに目を逸らした。
心臓、止まるかと思った…。
っていうか、なんで皆辻君…こっちを見てんのよ…!
もしかして、昨日…頬をひっぱたいた女だって気付かれたのかしら…。
ま、まさかね…。
中庭の入り口から、私のところまで少し距離があるから、気付くなんてこと…あるわけないよね…。
ただボーッとこちらに視線を向けていた、ただそれだけよ…。
心の中で結論を出して頷いた。
「…………。」
なんか、居心地悪いし…教室に戻って、お昼ご飯を食べようかな…。
亜弓ちゃん、ごめんね…。
申し訳なさを感じながら、食べかけのお弁当箱のフタを閉めて、小さなバッグにしまいこんだ。
中庭への出入り口は、もう一つあるから、そっちから出よっと…。
ベンチから立ち上がり、コソコソと歩き始めた時だった。
「2年C組、芹澤 紗姫。」
すぐ後ろから聞こえてきた、低い声。
こ、この声は…。
嫌な汗が背中をつたう中、私は、ゆっくりと振り向いた。