王子様の危険な恋愛領域
ち、違う…。
これは、何かの間違いよ…。
キョロキョロと周りを見ながら戸惑っていると、皆辻君は私の頭に手をのせる。
そして、耳元に顔を近付けてきた。
「言っておくけど、紗姫に拒否権はねぇから。」
低い声で囁かれて、ビクッと体が震える。
口をパクパクさせて驚いていると、皆辻君は掴んでいた私の腕を離した。
「とりあえず…言いたかったのは、それだけ。じゃあな。」
「えっ、ちょ…ちょっと!!」
咄嗟に呼び止めたけど、皆辻君はスタスタと足早に中庭から出ていく。
そのあとをゾロゾロと追いかけていく女の子たち。
驚いた表情で私のところに、駆け寄ってくる亜弓ちゃん。
校舎の窓から聞こえてくる女の子たちの騒がしい声。
穏やかな昼休みが一変した中庭で、私は暫くの間…茫然と立ち尽くしていた。