王子様の危険な恋愛領域
「ほ、ほんと!?」
「ああ。とりあえず、だけどな。」
うーん…。
“とりあえず”っていうのが引っ掛かる。
あれだけ拒否権ナシとか言っておきながら、急に取り消してくれるなんて、なんか怪しいけど、まあいっか…。
取り消してもらえれば、高校生活は平穏に送れるもんね…。
ホッと胸を撫で下ろしていると、皆辻君は私に顔を近付けてきた。
「ただし、条件がある。」
「じょ、条件……?」
首を傾げる私を、皆辻君は真っ直ぐな目で見つめてきた。
「しばらくの間、俺と付き合ってる“フリ”をしろ。」
「えっ!?」
驚きのあまり、大きな声が口から飛び出した。
「ま、待ってよ!なんで私がそんなことしなくちゃいけないの!?」
「鬱陶しい女たちが近寄ってくるのを防ぐため。紗姫が居れば、女たちは俺の傍に来ないだろうし。」
よ、要するに…私を女除けにしたいわけか…。
そういう思惑があったわけね…。
「この条件を受け入れないなら、発言の取り消しもしねぇけど、どうする?」
どうしよう…。
付き合うフリするのは嫌だけど、しばらく我慢すれば、私は自由の身…。
平和な日常が戻ってくる…。
それに、あくまで女除けとして付き合うフリをするだけなんだから、適当にやればいいよね…。