王子様の危険な恋愛領域
「お、お待たせ……。」
「息切れしてんじゃん。そんなに急いで準備する必要ねぇだろ。」
そんなこと言われても、待っていられると、ついつい慌てちゃうんだよ…。
荒い呼吸を繰り返しながら靴を履き、お母さんたちに“行って来ます”と言って玄関のドアを開けて外に出る。
学校に向かって歩きだそうとした時だった。
「紗姫、ちょっとストップ。動くな。」
「えっ?」
反射的に立ち止まる私。
何事かと不思議に思っていると、皆辻君が私の目の前に立った。
「前髪、少し跳ねてる…。」
私の前髪に優しく触れる皆辻君の指。
予期せぬ行動に、私は瞬きをしながら驚いてしまった。