王子様の危険な恋愛領域
何事かと驚いて教室の入り口に視線を向ければ、そこには光琉が立っていた。
「紗姫、こっち来い。」
私を呼ぶ声に、女の子たちからまたしても歓声が沸き起こる。
一気に騒がしくなった教室。
女の子たちが、うっとりとした視線を光琉に注ぐ中、当人は鬱陶しそうに眉をしかめている。
今にも怒りそうな雰囲気だ。
「紗姫、早くしろ。」
低い声で促された私は、お弁当箱を持って、慌てて光琉のもとに駆け寄った。
「そ、そんなに急かさないでよ…。」
チクリと不満を零したけれど、光琉は取り合うことなく、私の手を握る。
「…行くぞ。」
そして、頬を赤らめている周りの女の子たちには目もくれずに、スタスタと歩き始めた。