王子様の危険な恋愛領域
廊下ですれ違う女の子たちの視線も、完全に無視状態の光琉。
無愛想っぷりは健在だ。
今朝…私に見せたような笑顔、みんなにも振りまけばいいものを…。
心の中でこっそりと思っているうちに、いつの間にか保健室の前に来ていた。
「そう言えば、光琉のファンの女の子たちって、ここまで追いかけて来ないんだね…。」
ふと感じた素朴な疑問。
昨日の放課後も、保健室までついて来る女の子は誰もいなかった。
いつも、たくさんの黄色い歓声を浴びている光琉。
熱烈なファンも多そうなのに、女の子たち…意外とアッサリしてるところがあるんだな…。
「黒岩先輩と付き合うフリする前は、朝も昼休みも放課後も、鬱陶しい女子たちが俺のあとをゾロゾロ追いかけてきた。ウザいから、ここの避難部屋に逃げるために女子を撒いてたけど。」
「へ、へぇ…。」
結構、苦労してたんだ…。
「付き合うフリしてからは、そういう女子はいなくなったな。俺が彼女と一緒に居る時は、邪魔しないようにする…っていう暗黙のルールがあるらしい。」
「ふーん…。」
「ただし、俺が一人でいる時は、そのルールに当てはまらないんだとさ。だから、女子たちは遠慮なく話しかけてくる。」
「そ、そうなんだ…。」
色々とファンの間で取り決めがあるなんて、知らなかった…。