Samsara
「自己紹介でもしましょう?」
少女は、話を進めた。
今、自分の目の前に、
死神がいて当然だ、と思っているかの如く。
「あたしの名前は…」
「リーゼル・ライナス、でしょう?」
「…そうです。
自己紹介しなくとも、分かりますよね。
すみません。」
死神が リーゼルの名を 知っている。
普通に考えてみれば 分かる、簡単な事だ。
死神が、魂の回収元である・人間の名前を
知っていなくてどうする?
人間の名を 知っているのは 当然なんだ。
そう、彼女は 考えたのだ。
「貴方は…?」
リーゼルは、死神に 対して聞いた。
死神は…
「ありませんよ。死神に名前なんて。」
「え…」
「死神は、この世に いくつも居る。
人間の命を刈る為に 居る存在。
そんな存在の死神に、名前なんて いらないでしょう?」
リーゼルは、
聞いてはいけなかった質問だったと分かり、
戸惑ってしまった。