Hair cuts
「ところで、おめぇよ、勉強は進んでんのか?」

「追試免れる程度にな」

「さすが俺の息子だな、おい」

俺は褒められているのだろうか?が、そこはあえて聞かなかったことにしてもくもくと食事を続けた。今夜の夕食は俺の好きなものばかりだ。グラタンとオムライス。それにコーンポタージュ。コーンポタージュは紙パックに入って売っている市販の物だけど、それ以外は全部親父の手作りだ。親父が料理をするようになったのはお袋が出て行ってからだ。初めは卵焼きすら作れなかったのに、今ではホワイトソースまで手作りする始末。親父は顔に似合わず手先が器用だ。お袋の味は覚えていない。でも親父の味なら舌がしっかり記憶している。

「なんだよ、愛華の分も作ったのに、無駄になっちまった」

ラップをかけたオムライスの上にケチャップで「アイカ」の文字。俺のオムライスにはそんなんなかったぞって、ちょっと文句を言いたくなったが、がきくせぇこと言うなよと言われるのがおちなのでやめた。

親父は愛華を気に入っている。娘ができたとでも思っているのだろうか。
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