Hair cuts

いつの間にかとろりとした闇に包まれていた。もう、何時間も同じ格好で座ってるのでお尻も足も痺れている。

母との電話を切ったあと、私は埃の被ったパソコンを起動させた。事件のことを調べるつもりだった。ジルが出て行ってからほとんど開く事の無かったパソコンはのろのろと起動を始めた。パソコンが立ち上がるまで、私は母の言ったことを頭の中で繰り返した。

（浩人君ね、愛華ちゃんに暴力を振るっていたみたいなの。アルコール中毒だったみたい。愛華ちゃん、いつもどこか怪我をしていたって近所の人たちも証言していた。可愛そうよね。それで、時々遊里君が愛華ちゃんの相談に乗っていたみたいなんだけど、なんと浩人君。愛華ちゃんと遊里くんができてるって思い込んでたみたい。その日もね、愛華ちゃんに呼ばれて遊里君がかけつけたのよ。そしたら、浩人君が愛華ちゃんののどをざくって。凶器は剃刀。剃刀っていっても、あれよ、あれ。理容師の使うほうの。止めに入った遊里君も腕を切られてねぇ。遊里君、隙を見て外に飛び出して助けを求めたの。その間に、浩人君も自分の首を切って…。辺り一面血の海だったって…。え？なんでもっと早く知らせてくれなかったのって？だって、あんたがグアムへ行った日の夜の出来事なんだもの。そう、あの事件からもう一ヵ月もたつのねぇ。ところで、あんた。荷物の整理は進んでるの？）