Hair cuts
「で、遊里のやつ、これとはどうすんだ」

親父がにんまりしながら小指を立てた。近頃親父はやたら俺の友達の事や学校での生活を聞きたがる。

「ああ、さくらのことか。さくらは東京へ行く。だから遊里とは遠距離になるんだろうな」

夏休み、さくらは東京のサロンの面接を受け、早々と、仮の内定をもらってきた。仮というのは、つまり、国家試験に合格して、免許を得れば正式に内定。もし不合格だった場合は白紙ということになる。でも、さくらなら大丈夫だろう。あいつは努力家だし、筆記テストの成績はいつもトップだから。

「じゃあ、その二人はもうお仕舞いだな」

身もふたもないと思ったが、それは俺もうっすらと感じていたことだ。きっと、さくらは東京へ行ったらしばらく戻ってこない。遊里も両親の元を離れる事ができない。二人の終わりは、そう遠くないところになるだろう。勿論、そんなことは言わない。言えば、きっと、俺たちの関係に亀裂が生じるし、何より愛華が悲しむ。それでなくとも、さくらの内定が決まった途端、ショックの余り三日間も寝込んだというのに。
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