Hair cuts
夜中にどしんと物音がして家中が揺れた。俺は、地震かと飛び起きた。「親父」と叫んだが返事が無い。親父は起きているだろうか?まさか箪笥の下敷きになっているなんてことは、あの怪力親父に限ってないとは思ったが、呼んでも返事がなかったので慌てて親父の部屋へかけつけると、首にロープを巻いた親父がひっくり返っていた。転がる親父の側には脚立。天井の梁が見事に壊れていた。
「ばか、何やってんだよ」
何が起こったのか瞬時に悟った俺は親父の首からロープを外すと、親父の頬を力任せに殴りつけた。がぎっと鈍い音がして、親父が布団の上に倒れる。予想以上に軽い親父の体にショックを受けた。それもそのはず、親父の背中は、前よりも薄くなっていた。
俺は、その背中を何度も何度も踏みつけた。「ふさけんなよ、何やってんだよ、クソ親父」そう繰り返しながら。亀のようにうずくまり親父は頭を守るように抱えて小さくなった。
ちくしょう、ちくしょう
親父は抵抗してこなかった。それが、余計に俺の神経を逆なでる。
どうしていつもみたいに投げ飛ばそうとしない。貧弱な俺にやられて黙っている親父じゃないだろう。さあ、来いよ。殴れ、投げろ。なぁ、どうした。頼むから、やり返してくれよ。頼むよぉ。
祈るような気持で、俺はめちゃくちゃに親父を蹴り上げ、殴った。親父に手を上げるなんて生まれて初めてのことだった。体中が燃えるように熱かった。
親父まで俺を捨てようとした。俺が独りぼっちになると知りながら、なのに死のうとした親父。許せなかった。
「ばか、何やってんだよ」
何が起こったのか瞬時に悟った俺は親父の首からロープを外すと、親父の頬を力任せに殴りつけた。がぎっと鈍い音がして、親父が布団の上に倒れる。予想以上に軽い親父の体にショックを受けた。それもそのはず、親父の背中は、前よりも薄くなっていた。
俺は、その背中を何度も何度も踏みつけた。「ふさけんなよ、何やってんだよ、クソ親父」そう繰り返しながら。亀のようにうずくまり親父は頭を守るように抱えて小さくなった。
ちくしょう、ちくしょう
親父は抵抗してこなかった。それが、余計に俺の神経を逆なでる。
どうしていつもみたいに投げ飛ばそうとしない。貧弱な俺にやられて黙っている親父じゃないだろう。さあ、来いよ。殴れ、投げろ。なぁ、どうした。頼むから、やり返してくれよ。頼むよぉ。
祈るような気持で、俺はめちゃくちゃに親父を蹴り上げ、殴った。親父に手を上げるなんて生まれて初めてのことだった。体中が燃えるように熱かった。
親父まで俺を捨てようとした。俺が独りぼっちになると知りながら、なのに死のうとした親父。許せなかった。