Hair cuts

愛華十九歳・冬

妊娠三ヵ月ですと、あの医者は言った。表情一つ変えず、真顔で。どうしますか?と聞かれて、返事をする代わりに、堕胎費用のことを尋ねた。医者はまた顔色一つ変えず、費用を告げた。

なのに、診察を終えると看護士に個室へ案内され、命の尊さについて長々と語られてしまった。

(学生と言っても、あと少しで卒業でしょう?産めなくはないよね?それなのに、どうして諦めちゃうの)

(経済的な理由で)

(彼氏も学生さん?)

(そうです)

(両親の協力をえることはできないの?堕胎について、彼はなんて言ってるの?)

(…)
看護師の物腰は柔らかく、瞳は慈悲深く、決してあたしを責めたりはしなかったが、それでもあたしは、赤の他人であるその人に根掘り葉掘り事情を探られるのはたまらなかった。

(もう一度じっくり考えておいで)

結局、その看護師はそう言って、笑顔であたしを送り出してくれた。
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