Hair cuts
のちに、インターネットサイトの掲示板で知ったのだけれど、あたしの訪れた産婦人科は、県内でも指折りの人気の産婦人科で、設備は万全、先生は不妊治療のスペシャリストという、つまり、産む人、授かりたい人がこぞって訪ねる場所であり、あたしのような人が行くべき場所ではないということがわかった。たまにあたしのような人がぷらりと行くと、看護士たちが親身になって相談に乗り、なるべく産む方向へ導くのだというのも掲示板の情報で知った。

だからあたしは、病院を変えた。ネットで調べて、堕胎専門と名高い婦人科に。

手術の日は大雪で、あたり一面真っ白だった。タクシーで病院へ向う途中、渋滞へ巻き込まれて予約の時間に三十分も遅れたけれど、病院はがらがらで、あたしは感傷に浸る暇もなく手術台へ登った。

いつも一緒にいる浩人が、こんなときに限って隣にいないことが不思議だったけれど、それは当然のことだ。

浩人は、あたしが妊娠したことを知らない。
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