Hair cuts

予感はあった。秋の終わりごろから、浩人が避妊をしなくなって、だから、いつかこんな日が来るというのは目に見えていた。浩人の微妙な変化に気づいているのは多分あたしだけだ。さくらは勿論、遊里だって知らない。

もともと束縛の激しかった浩人だけれど、前はあたしがどこで何をしているのか告げれば、安心してくれたのに。

そもそも、浩人と一緒にいないとき、あたしはたいてい家にいる。たまに外に出ているときでも、おばあちゃんと近所のスーパーで買い物をしているか、おばあちゃんの病院へ付き添っているかのどちらか。なのに浩人はあたしが浮気しているのではないかと疑う。ばかみたい。浮気しているのは自分のほうなのに。でも、勿論、あたしはそんなことは言わない。浩人が納得するまで弁解する。

そもそも、あたしの行動にも問題があったのだ。おばあちゃんの膝が悪くなって大学病院へ検査に行ったとき、いつも行く個人病院よりずっと待ち時間が長くて、しかも携帯電話の電源を切っていた。半日以上浩人に連絡できなかった。その間、浩人は何度も連絡をしたというのに。そんな気も知らないで、あたしは（担当の外科医の先生がちょっと渋くて素敵だった）などと無神経は発言までしてしまった。