Hair cuts
だから浩人が怒るのは当然だ。殴られても仕方なかった。

勿論びっくりしたけれど、その後、浩人は泣きながら謝ってくれた。自分で自分の頭を殴りながら、かきむしりながら必死に。アンバーに染めたばかりの髪の毛が床に散らばるほど強く自分を責めた。そして、もう二度と殴ったりしないと約束した。

もちろん、その約束は守られている。浩人は今ちょっと不安定なのだろう。お父さんが病気になって、勉強も思うように進まなくて。

口には出さないけれど、浩人は遊里が県大会で入賞したことにショックを受けている。遊里をこの道に導いたのは自分なのに、自分は理容師の息子なのにって焦っている。

バカな浩人。でも、だから愛おしい。

浩人はものすごく繊細で弱い。それを知っているのはあたしだけだし、あたし以外知らなくていい。
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