Hair cuts
傷の舐めあい、と、さくらは言うんだろう。いいよ、まさに、その通りだったから。

俺と愛華は理不尽な感情を埋めあうためだけに、互いをはけ口として必要としていた。俺達は弱いし、一人ぼっちはあまりに寂しいから。

そんな不思議な関係がずいぶんと続いた。浩人に悟られることもなく、だ。

俺と愛華の間には奇妙な連帯感が生じていた。これもある種の絆なのだろう。でも、そういう関係もありなのかもしれないと思った。傷を舐めあう異性の友達がいてもいいと。

なのに、あの日、とうとう俺たちは一線を越えてしまった。そうなった理由はうまく説明できない。けど、俺達の中に積み重なった薄汚れどろどろしな何かが、とうとうあふれ出て、まるで磁石のように轢き合わさってぴったりとくっついてしまったんだ。そうとしか言えないよ。

それで、すっきりしたかって?

まさか!

残されたのは酷い後悔と、さくらと浩人に対する罪悪感だけだったよ。
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