Hair cuts

私がぼんやりと二人の男の子の後姿を眺めていると、「あのぉ」と、控えめに声をかけられた。

「あのぉ…」

振り向くと、式の時またまた隣りに座っていた女の子がいた。黒のリクルートスーツに黒のパンプス。肩まで伸びた髪の毛を薄く茶色に染め、チューシャで留めた彼女は、私と同じくらい地味だった。

「あの、あたし、愛華っていうの。桜庭愛華」

突然、彼女…。桜庭愛華は自己紹介をし、それから、

「なんだか、わたしたち場違いな格好できちゃったね」

と、肩をすくめた。同じように、まるで入社式のような服装でやってきた私に親近感が湧いたようだった。

「う、うん。本当に」

知り合いがいなくて、不安だった私にとって、どんな理由であれ、話しかけてくれた子がいたことは嬉しかった。

「あ、私のことは愛華って呼んで。ねえ、よかったら、名前教えてもらってもいい？」

「ああ、ごめんね。私は赤坂さくら。私のこともさくらって呼んで」

「さくら…ちゃん。ああ、やっぱりいきなり呼び捨てって難しい」

愛華は頬を赤くした。のちに知る事になるのだけれど、愛華は赤面症で、緊張すると耳まで赤くなった。