Hair cuts
「よかったら、連絡先交換しない?」

私が携帯を差し出すと、愛華はぱっと顔を輝かせた。小さな花が咲いたような可憐な笑顔だった。

「よかった。あたし、誰も知ってる人がいなくて、泣きそうだったんだ」

「私だってそうだよ。しかも、なんだかみんな恐そうだし」

「うん、特に白金の男の子。すごい勇気だよね。式の最中メール打ったり、校長のシャメ撮ったり」

「本当だよね。校長先生が、その男の子のこと壇上からちらちら見てたの気づいてた?」

「気づいてたよ。なんか、こっちが気まずいって言うか…」

「まったくだよねぇ。空気読めって感じだね」

赤外線で連絡先を交換しながら、私たちはついさっき行なわれた式の話題で盛り上がった。もちろん話題の中心は、あの白金君だ。

連絡先の交換が終わると、愛華は、でも…と頬を赤くした。

「でも、あの男の子、ちょっとだけかっこよかったね」
 
純情で大人しそうな愛華が、あんな不良っぽい男の子がタイプだなんてものすごく意外だった。

これが、のちに親友となる愛華との出会いだった。
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