Hair cuts
GWを目前にしたある日、私と愛華は夜桜を見るためにバスに乗って市の公園に来ていた。

実習のあった日だったから、水色のシャツにクリーム色のパンツスタイルという冴えない格好だった。少し肌寒かったので、私たちは腕を組んで歩いた。その年は寒く、桜の開花が例年より遅かった。だから、園内の桜はちょうど見ごろだった。

「実はね、昨日私の誕生日だったんだ」

思い出したように私が言うと、

「嘘!なんで言ってくれなかったの?」

愛華が組んでいた腕をぱっと離した。

「えー、だって、なんだかプレゼントを要求してるみたいじゃない」

「でも言って欲しかったな。何かお祝いしたかったもん。やだな、さくらってば水臭い」

「その気持だけで充分だよ」

「でもさぁ…」

愛華は小さな鼻にくしゃりとしわを寄せ拗ねた顔をした。夜に浮かぶ桜の花のように白く可憐な横顔。決して目立つタイプではないけれど、愛華は綺麗な女の子だった。

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