Hair cuts
「ああ、そうか、だから、さくらなんだ。さくらの時期に生まれたから。あたしって、鈍いなぁ」

私の誕生日を祝えなかったことがよほど悔しかったらしく、しばらく愛華はぶつぶつ言っていた。

「いいって、そんなこと。それより、私、あれ食べたい」

私は「いちご飴」の屋台に駆け寄った。

「下さいな」

 財布からお金を出し、店のおじさんに渡そうとすると、後ろから愛華が二人分の料金をおじさんの手に乗せた。

「ハッピーバースデー、さくら」

いちご飴を差し出し、愛華がにっこり笑った。

「やだ、悪い」

お金を返そうとすると、愛華は頑なに拒んだ。

「これぐらいさせてよね」

「本当に、いいのに…」

でも、結局私は愛華の行為に甘えることにした。私たちはいちご飴を舐めながら、また腕を組んで歩いた。

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