Hair cuts
たくさんの人にもまれながら、私たちは二人で一つみたいにぴったりとくっついていた。どうでもいいようなことがいちいちおかしくて、顔を見合わせ、またくつくつと笑った。

そういえば、と愛華が私の顔を覗き込んだ。

「そういえば、昨日はおうちでパーティーしたの?」

「ううん。誕生会はね、ゴールデンウィークにするの。弟がね、帰ってくるから」
 
私の家では、誰かの誕生日は家族揃ってお祝いする決まりになっていた。当時、弟は野球の特待生で寮生活をしていたので、私の誕生日に都合よく帰ってこられなかったのだ。

「へぇ、仲、いいんだね」

呟いた愛華の声は、少し寂しそうだった。

「そう?めんどくさいだけだよ。弟だって、本当は友達と遊びたいのにさ。それに、大したことするわけじゃないんだ。ただ、ケーキ食べるだけ。それだけなんだよ」
 
私は、いかに我が家の行事がくだらなく、つまらないものであるか強調しようとしたのだけれど、

「でも、いいな。そういうの」
 
愛華が本当に羨ましそうに言うものだから、それ以上何も言えなくなってしまった。

愛華は、母方の祖父母と暮らしていた。幼い頃両親が離婚し、母親に引き取られたのだけれど、その母親もすぐに再婚し、愛華を置いて出て行ってしまった。父親の方も再婚して新しい家庭があるらしく、愛華は長いこと両親にあっていなかったのだ。
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