Hair cuts
「まあ、後でじっくり聞かせてもらうよ」

「うん…。ほんっと、ごめんね」

「いいってば。それより、愛華はいいんでしょう?浩人君で」

「うん、まぁ…」

ほとんど涙目になっている愛華に、私はおめでとうと言った。愛華がほっとしたように微笑む。やっぱり、愛華は可愛いと思った。目立つタイプじゃないけれど、小さくて、品のある、野に咲く花のように可憐な女の子。その魅力にいち早く気づいた浩人はなかなか見る目があるのかもしれない。

「ほら、実習室行こう」

「ん…」

愛華はいそいそとウィッグやその他の道具を実習バックに押し込むと、思い出したように訊ねた。

「ところで、昨日、どうだったの?」

「どうって?」

「だって、あの後、遊里君に送ってもらったんでしょう?」

悪戯っぽく笑う愛華に、私は、「どうもこうも、ただ送ってみらっただけに決まってるじゃない!」と、むきになって答えた。
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