Hair cuts

「さくらっち、彼氏とは順調？」

ある日の放課後、実習の後片付けをしていると、大場先生にそう言われた。大場先生は生徒たちを苗字ではなく名前やあだ名で呼ぶ。私と愛華は「っち」をつけて呼ばれていた。さくらっちと愛華っち。

「え？どうして知ってるんですか？」

ローションでべとべとになった手を洗うのをやめて顔をあげると、「そりゃわかるよ」と先生は悪戯っぽく笑った。私は照れて俯いた。

遊里と付き合い始めたのは、ごく最近のことだ。ただ、当初から浩人と愛華は、私たちの交際を後押ししていた。四人集まるたびに、浩人には「お前たちも付き合えばいいじゃん」とはやし立てられて、愛華まで「遊里のこと嫌い？」なんていつも聞かれて、初めの頃こそ、「まあまあまあ…」とか「いやいやいや…」と話をあやふやにしてきた私と遊里も、最終的には、「まぁ、いっか。そこまで言うなら付き合ってみる？」みたいなのりで恋人同士になった。

つまり、いちいち言い訳するのが面倒になったというわけだ。