Hair cuts
遊里十八歳・夏
夏休みを目前に、浩人の髪の毛が灰色に変わった。
「お前もさ、色変えたら?赤なんてだせぇよ」
迎えにいった俺に、朝からこんな事を言う。まったく、おはようぐらい言ったらどうなんだよ。それに、「赤にしろよと。お前に絶対に合うから」そう言ったのは自分のくせに。浩人のやつ、覚えちゃいないんだもんな。
相変わらず適当で無責任な男だと思ったが、むかつきはしなかった。だって、それが浩人だ。そんなことにいちいち腹を立てていたら、こいつと十五年も付き合っていられない。
「親父、行って来る」
「ああ、金払ってんだからきちんと勉強してこいや」
浩人の親父は咥えタバコで洗濯物を干していた。俺と目が合うと、にっと笑った。俺もにっと笑い返した。
浩人の親父は理容師だ。「竹中理容店」というのが浩人の家で、浩人は親父と二人で暮らしている。浩人の親父は腕のいい理容師だけれど、大酒のみで、時々暴れる。愛想をつかした浩人の母親は、浩人が小学校に入学して間もなく家を出て行った。
「お前もさ、色変えたら?赤なんてだせぇよ」
迎えにいった俺に、朝からこんな事を言う。まったく、おはようぐらい言ったらどうなんだよ。それに、「赤にしろよと。お前に絶対に合うから」そう言ったのは自分のくせに。浩人のやつ、覚えちゃいないんだもんな。
相変わらず適当で無責任な男だと思ったが、むかつきはしなかった。だって、それが浩人だ。そんなことにいちいち腹を立てていたら、こいつと十五年も付き合っていられない。
「親父、行って来る」
「ああ、金払ってんだからきちんと勉強してこいや」
浩人の親父は咥えタバコで洗濯物を干していた。俺と目が合うと、にっと笑った。俺もにっと笑い返した。
浩人の親父は理容師だ。「竹中理容店」というのが浩人の家で、浩人は親父と二人で暮らしている。浩人の親父は腕のいい理容師だけれど、大酒のみで、時々暴れる。愛想をつかした浩人の母親は、浩人が小学校に入学して間もなく家を出て行った。