Hair cuts
「運転頼むわ」

駐車場に着くなり、浩人はキーを投げてよこした。この黒のオデッセイは入学祝に浩人の親父が浩人に買い与えたものだ。中古だけれど、浩人が大事にしているからぴかぴかだ。俺も時々浩人と一緒に洗車している。

「また、メールかよ?」

「おうよ」

助手席に乗ったとたん携帯をぴこぴこする浩人を横目に俺はエンジンを回した。きゅるるっと鳴るエンジン音に、お、今日は機嫌が悪いか?なんて思う。俺といると浩人はあまり運転しない。だから俺はこの車に自分の物みたいに愛着が湧いていた。

車が損ねた機嫌を直して走り出す。浩人はまだ携帯をいじっている。車内は熱気に包まれていて蒸し暑い。豪雪の冬の後は、うだるように暑い夏かよと、俺はげんなりした。クーラーが効くまで待てなくて窓を全開にした。青くさい草の香りと湿った土の匂いが、蒸れて男臭い車内を浄化していく。

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