Hair cuts
「ああ、ケツと腰がいてぇ」

車から降りるとき、浩人が唸った。

「何、また制裁くらったの?」

「そういうこと。学校の話をしてたら、いきなり、お前はこの仕事舐めてんのかってキレ始めて、気づいたときには体が宙に浮いてた」

実習用具の詰まったでかいカバンを浩人が投げる真似をした。詰め込まれた道具ががちゃんとぶつかり合う音がして、

「おいおい、ウィッグが壊れたらどうすんだよ」

俺は焦ったが、浩人は、大丈夫だベと平気そうな顔をしている。

浩人の親父は昔柔道の選手だった。ここいらじゃ結構名の知れた選手で、将来は警察官になりたかったらしいのだが、なんせ昔から素行が悪く、ついでに酒癖も悪く、窃盗や傷害の補導歴があり、そういうこともあって警察官にはなれなかったらしい。

それで、なんでまた理容師なのかは謎なのだが、根は悪くない浩人の親父の店はそこそこ繁盛していた。

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