Hair cuts
「まったく、バカな親父持つと苦労するわ」

浩人は口癖のように言ったが、そう言う時の浩人はどこか誇らしげだった。こいつは親父のことが大好きなのだ。アル中で、暴力的な親父のことを尊敬している。

俺はそんな浩人親子の関係が実は羨ましかった。浩人が美容師の道を志したのももちろん親父の影響だ。

(親父の店を継ごうと思うんだ。でも、むさくるしい男の髭をそったりバリカンで丸刈りにするのはごめんだねだからさ、俺は美容師になる。いずれは理・美容店にするつもりだ。親父、おればっかり若いお姉ちゃん相手にしてるの見たら悔しがるだろうな。ハハハ…)

いつも一緒にばかやってる浩人が、意外にも真面目に将来のことを考えていると知って、ずいぶん焦ったっけ。

美容師か。かっこいいな。俺も、なろうかな。

おう、なれなれ。一緒にカリスマ美容師目指すべよ!

そういうわけで俺も浩人と一緒に美容学校に進学した。浩人と一緒なら退屈しないだろと思ったし。

ああ、俺、愛華のこととやかく言う権利ないな。俺も浩人に依存してるわ。
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