Hair cuts
「お前、最近は寝坊しなくなったな」

学校の門を軽い足取りでくぐる浩人をからかうと、

「だって、今日はカット実習があるだろう」

まるで遠足を楽しみにしているガキのような笑顔で浩人が振り返った。

ったく、単純なやつだな。

玄関で愛華が浩人を待っていた。いつものお出迎え。これは浩人が愛華にさせていることだ。まるで亭主関白な旦那じゃないか。もちろん、俺はそんなことをさくらに要求したりしない。浩人と愛華がじゃれあいながら歩く後ろを、俺はぼんやりついていった。

教室に入ると、さくらが俺を見て微笑んだ。それから、すぐに下を向いて何かし始めた。スプレイヤーからこぼれた水滴をタオルで拭いている。

一時間目から実習か、と思うと少しだるかった。
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