Hair cuts
授業のあと、「英語喋れんるなんて知らなかった」というと、「あんなの喋ってるうちにはいらない」とさくらは謙遜した。

「でも、普通外人を目の前にしただけで頭が真っ白になるだろ。いざとなったら天気だって答えられないよ」

「別に間違ってもいいから聞こう、話そうとする気持が大事なんだよ」

「俺は無理だな。外国にはいけない」

「なんとかなるもんだよ、いざとなれば」

「え?外国行ったことあるの?」

「高校が英語科だったから。一ヶ月だけアメリカにホームステイしたの。まあ、遊んで来たようなものだけど」

初耳だった。

「全然知らなかった。何で言わなかったんだよ」

英語の苦手な俺はいつもテストで散々な結果だった。さくらに教えてもらえばよかった、損した。そうと知っていたら追試だってまぬがれたかもしれないのに。つめたいなと冗談めかすと、

「だって、遊里、何も聞かないじゃない」

と、さくら。

別に怒っている風でも責めている様子も無かったが、俺はなんだかどきっとした。さくらと付き合ってから一ヵ月が過ぎたけど、俺たちの間には恋人らしい雰囲気も、まして進展もなくて、デートといえば浩人と愛華と四人で遊ぶときだけ。電話やメールを毎日するわけでもないし、二人きりで会ったことさえない。そんなんで付き合ってるって言えるか?俺は今さら気づいたけど、さくらはもっと前からそう感じていたんだろうか?つうか、さくらは俺と付き合っていることをどう思っているんだろう?
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